■真珠■


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▼太古から愛されてきた真珠 ▼「しらたま」への愛着はかぎりなく

▼養殖真珠の出現 ▼天然真珠と養殖真珠の相違は

▼アコヤガイの真珠がいちばん美しい ▼「巻き」の厚さが重要なポイント

▼日本では、ピンク色の真珠が最高級品 ▼球形に近いものほど高価


☆太古から愛されてきた真珠

 真珠は、人類最古の宝石といわれています。
 他の多くの宝石は、産出されたままの自然の姿では美しさが見出されることはなく、
 研磨という人手による作業を経て、はじめてその美しさが発揮されてきます。
 しかし、真珠だけは、違います。
 貝の中から採取されたときからすでに優美な姿と現して、
 人々を魅了させずにはおきません。

 真珠は、人間にとっては、
 そのまま美しい「宝石」として用いることができたわけです。
 わが国では、古事記や日本書紀などにも真珠の記述がみられ、
 「しらたま」という名で、多くの古典や伝説にも登場しています。

 日本だけでなく、中国でも孔子の「尚書」に出てきます。
 西洋ではホメロスの詩の中にも真珠のことが謳われています。

 このように、真珠という宝石は、洋の東西を問わず、
 太古の昔から多くの人々のあこがれと人気を集めて、
 神秘的な宝物として珍重されてきたのです。



☆「しらたま」への愛着はかぎりなく

 現代に生きる私たちも、海の底にひっそりと息づいている貝の中に宿る真珠には、
 神秘の世界に触れるような思いがして、
 地中に永く眠りつづけていた他の宝石にもまして、
 愛しさをつのらせずに入られません。

 前にも述べたように、わが国では古くから真珠を「しらたま」と呼んで、
 ひすいやめのうなどとともにかぎりない愛着を寄せててきました。

 「海の底 しずくしらたま、風吹きて 海は荒れるとも 取らずばやまじ (万葉集)」

 真珠は昔から、「海女」と呼ばれる娘たちの手で採取されていました。
 この万葉集の歌にとどまらず、民話に絵画にと、
 そうした歴史を物語るものにはこと欠きません。


☆養殖真珠の出現

 この神秘的な「しらたま」を、人間の手で、
 より多く、より大きく、より美しく育てられないかという夢は、
 長い間、おそらく世界中の人々の胸に秘められていたことでしょう。

 その夢を世界にさきがけて日本が実現し、養殖真珠を生み出したのは、
 有名な御木本幸吉翁の努力もさることながら、
 海女おとめの伝統があったればこそに違いありません。

 真珠の養殖に用いられるアコヤガイは、
 以前は海女が採った天然貝を母貝として使っていましたが
 現在では、人工的に母貝が育成されています。

 わが国での真珠の養殖法は、まず7月上旬から8月中旬にかけて、
 スギの葉に付着したアコヤガイの稚貝を集め、
 水温が8度C以下にならないように注意して、その稚貝を育てていきます。

 それを9月から10月ごろに引き揚げ、かごに入れて、筏を組んで海の上に置きます。
 稚貝がかなり成長したのち、水温が13度Cぐらいの春から初夏にかけて、
 貝の中に核を挿入します。2週間ほどで「真珠袋」ができ、
 その後に真珠ができ始めて、
 その真珠を取り出すまでには早くても2年の歳月を要します。

 海からの引き揚げ作業は厳寒期に行われます。
 その時期に、真珠の表面がいちばん美しくなるからです。


☆天然真珠と養殖真珠の相違は

 人の手によって作り出される養殖真珠も、自然のはぐくむままにまかせた天然真珠も、
 同じ真珠貝の生理作用によって形成されるものですがら、
 本質的にはまったく変わりはありません。

 天然真珠は、自然に育った貝の体内に
 偶然に入った寄生虫や小魚などの死骸のかけら、
 あるいは砂の粒などが核となってつくられ、それが偶然の機会に発見されたものです。

 それに対して養殖真珠は人為的に体内に核を入れ、貝に真珠をつくらせることで、
 両者が異なるのはその点だけといえます。

 養殖真珠の最も古い試みは、13世紀の中国でつくり出された殻つき真珠ですが、
 技術的にも非常に稚拙なものでした。
 本格的な養殖真珠は、わが国で明治の中ごろ、
 御木本幸吉が「半月真珠」(殻つき)の産出に成功したのが始まりでしょう。

 御木本幸吉は、ただ養殖に成功したというだけではなく、
 養殖真珠を事業として発展させ、
 日本を世界の中の真珠王国に押し上げた功労者でもあります。
 現在では、その技術も飛躍的な進歩を挙げています。

☆アコヤガイの真珠がいちばん美しい

 養殖真珠に用いられる貝のことを「母貝」と呼んでいますが、
 わが国では前にも述べたようにアコヤガイが使われます。

 真珠をつくり出す母貝はアコヤガイだけとは限らずよその国では、
 主として二枚貝が使われているようです。
 日本でもアワビ、マベガイ、イガイ、カキなどが使われることがあります。

 しかし、作り出された真珠の色は、
 それぞれの母貝の貝殻の内面の色と同じになることが多く、
 その点でやはりアコヤガイでつくられた真珠がいちばん美しいとされています。
 また真珠は、海だけでなく、川や湖でも、淡水産の貝を用いてつくることができます。

☆「巻き」の厚さが重要なポイント

 母貝から取り出されたばかりの真珠は、「浜揚げ玉」と呼ばれ、
 その光沢や色、形、きずの具合などによって等級が決められます。
 真珠の価値を決める最も重要な条件は、核を取り巻く真珠層の厚さです。
 よく「巻き」と呼ばれているのがそれで、巻きの厚いものは光の反射が深く、
 光沢も重厚さがあって、なんともいえない風格を備えています。
 また、巻きが厚いほど養殖年数も長いということであり、
 外観的に優れているうえに、耐久性があり、変質や損傷にもつよいのが利点です。


☆日本では、ピンク色の真珠が最高級品

 真珠の色は、ピンク、ホワイト、ブラック、シルバー、クリーム、
 グレー、ゴールド、イエローなどがあって、実に多種多彩です。

 これらの中でも、同じ巻きの場合はピンク色のものが最高品とされ、
 生産も少ないので価格的にも高くなっています。

 イエロー、つまり黄色のものは産出量が多く、比較的安く手に入ります。
 色に対する評価は国によって、やや異なっていて、アメリカではピンクが好まれますが、
 イギリスをはじめとするヨーロッパではホワイトかシルバーが好まれ、
 東南アジアや中近東ではクリーム色が好まれる傾向があります。


☆球形に近いものほど高価

 カットや研磨を必要としない真珠は、取り出した時点で形が非常に重要視されます。

 真円の形をした真珠では、俗に「八方ころがし」と呼ばれる
 完全な球形に近いものほど価値が高くなります。

 しかし、巻きが厚いものほど、円にゆがみが生じやすいので、
 そのあたりの兼ね合いがむずかしいところです。
 真円のもの以外では、より奇形をしたものに希少性があり、
 その形を生かしたデザインの宝飾品が珍重されることになります。
 また、同じクラスの真珠の場合は、直径が大きいものほど値段も高くなっていきます。